僕は勇者、僕は……

世界に魔物が溢れ、人々は困り果てていました。

諸悪の根源は遥か遠い、異国の地にいる魔王です。

アクトは人より魔法が使え、体力も力もあり、頭のキレもなかなかのものでした。

それにアクトはその強さ故か、魔物に襲われるような事がありませんでした。

魔物は本能でアクトには勝てないと分かっていたようです。

人々はいつしかアクトの事を勇者と呼ぶようになりました。

アクトの父親もまた、勇者と呼ばれていました。

だけど、アクトの父親は旅に出たきり帰って来ることはありませんでした。

ある日アクトは魔王を討伐せんがために旅に出ることにしました。

アクトの妻のお腹の中にいる、まだ見ぬ子供や、世界中の人々のためにと思っていました。

資金や道具は王様が用意してくれた。村の人々も少ない食料やお金を分けてくれました。

旅を始めてから、アクトは色々な街や城を訪れました。

皆がアクトを応援し、援助してくれました。

人々が一つになっている、旅の中でアクトはそう思いました。

幾月も旅を続け、ついに魔王の城にたどり着きました。

魔王は頭からつま先まで鎧や兜で覆っており、顔は分かりませんでした。

魔王は簡単に殺す事ができました。

アクトは魔王が本気で戦っていないような気がしました。

それでもこれは吉報、アクトは来た道を戻りながら、それぞれの街や城で魔王を討伐した事を伝えました。

人々は歓喜し、感謝の言葉をアクトに言いました

そんなある日、街で村人からの感謝の言葉を聞いているとアクトは背中を刃物で切りつけられてしまいました。

犯人はどうやら武器屋だったようです。

魔物がいなくなれば商売上がったり。

そんな話を聞いたアクトはひどく落ち込みました。

命に別状はなかったものの、その街にしばらく滞在する事になりました。

その間に、全世界に魔王討伐のう噂が流れていきました。

傷はまだ回復せず、何年も街で寝たきりの生活を送る事になりました。

そんな中、人々は人々同士で争うようになりました。

アクトは一日中自分がした事を考え続ける日々を送りました。

魔王がいたからこそ人々は一つだったのかもしれない、そんな思考が思い浮かんでは消え、思い浮かんでは消えました。

ふさぎがちになっていたアクトは人々が争い始めたのは自分の責任なのかもしれないと考え始めました。

やがて、アクトの傷は完全に癒え故郷に戻る準備をしていました。

街を出ようとした時、何百人という兵士が群れを成して街を包囲しました。

魔王を倒すほどの力を持ったアクトの力を人々は恐れるようになったのです。

アクトは何百人といる兵士を倒し、からくも逃げ出します。

逃げ出した先は魔王の城。

そして、ある日アクトは魔王になりました。

アクトは気づきます、自分が倒した魔王はもしかすると父親だったのではないか、と。

とすると自分を倒す事ができるのも自分の子供しかいません。

アクトは魔王が着ていた鎧をその身に纏い、玉座に腰をおろしました。

作者あとがき

ドラクエをプレイしていて感じた事などを、小さくまとめてみました。
ドラクエをリアルに突き詰めていくと、実はこうなんじゃないか。
ていう議論は結構好きで、それを形にしてみました。
僕はこうだと思います、あなたは?

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